日本の色彩について
日本人は古来より色に様々な意味を持って生活してきました。
身分の識別のためではなく、
時には風景を、
時には心情を色に昇華し、
楽しみ、
身近なものとして愛でてきた歴史があります。
"京都 川端商店"では
日本人の情緒を取り入れた色彩へのアプローチを大切に、
染色を行っております。
思いや歴史の情感が込もった
「新万葉染め」で染める色彩をご紹介致します。
是非ご覧ください。
"新万葉染め"より定めた30色を定番色とし『京の色』として染めています
※確認したい配色をクリックして下さい。
- 使用する色材
- コチニール
今様色
いまよういろ
おもいいずる ときはのやまの いわつつじ いわねばこそあれ こいしきものを
古今集・495
【説明】
今様の意味は「現代風の」、「流行の」などで、鮮やかな紫身のある紅色を指します。
この色は、遅くとも10世紀頃の平安時代には流行しており、色名にある"今"は平安時代を意味します。
- 使用する色材
- コチニール/アカネ
桃色
ももいろ
我が行きは 七日は過ぎじ 龍田彦 ゆめこの花を風にな散らし
万葉集 第9巻
【説明】
桃色は、JISの色彩規格では「やわらかい赤」とし、一般には淡く薄い紅色を指します。
起源は古く中国や日本では魔除けの力を持つとされており、万葉集にはすでに「桃花褐(ももそめ)」の記述が見られます。
- 使用する色材
- コチニール/マリーゴールド
黄丹
おうに
よられつる野もせの草のかげろひてすずしくくもる夕立の空
古今集
【説明】
黄丹は、クチナシで下染めしたものに紅花を染め重ねた鮮やかな赤みの橙色のことです。
JISの色彩規格では「強い黄赤」を指します。
大宝律令(701年)の制服から染色名としての黄丹が確認されています。
当時、黄丹は天子の"白"に次ぐ、皇太子の色として"禁色"とされていました。
- 使用する色材
- アカネ
東雲色
しののめいろ
東雲の別れを惜しみ我ぞまづ鳥よりさきになきはじめつつる
古今集
【説明】
東雲とは夜が空け始める頃の太陽で白み始める東の空のことで、明るい黄赤色を指します。
東雲色は、当時の生活において篠笹で作られた網戸の編目にあたるものを"篠の目"と呼んでおり、明け方の東の雲が淡いピンクに染まり"篠の目"から真っ暗な室内へ明りが差し込んだことから東雲色と呼ぶようになったそうです。
- 使用する色材
- アカネ
茜色
あかねいろ
あかねさす紫野ゆき 標野(しめの)ゆき
野守は見ずや 君が袖ふる~額田王《ぬかたのおほきみ》 『万葉集』 巻1-0020 雑歌
【説明】
茜の根で染めた暗い赤色のことを指します。JISの色彩規格では「こい赤」としています。
飛鳥~奈良時代より茜は染料として使用されており、『万葉集』にも茜染の色合いの「紫」、「日」などの枕詞として詠まれています。
- 使用する色材
- アカネ
梅染
うめぞめ
時雨かときけば木の葉のふるものをそれにも濡るるわがたもとかな
新古今 冬 567
【説明】
本来の「梅染」は紅梅の樹皮や根を煎じた汁で染めたものや、その色のことです。
「赤梅染」は赤みのある茶色、「黒梅染」は黒ずんだ茶色を指し、室町時代から加賀で行われている無地染めの染色技法で"加賀染"や"お国染"ともよばれています。
京都川端商店での「梅染」は茜を使用して表現しています。
- 使用する色材
- アカネ/ログウッド
薄紅
うすくれない
昔より名にはきけども今日みればむべめかれせぬ糸さくらかな
孝明天皇御
【説明】
淡く、ややくすんだ紅色を指します。
- 使用する色材
- アカネ/ログウッド/コチニール
古代紫
こだいむらさき
聖霊《しょうりょう》の 帰り路送る 送り火の もえたちかぬる 月あかりかな
~正岡子規
【説明】
紫草という多年草の根による紫根染めで染められており、江戸時代に流行した青みを帯びた派手な紫が『今紫』と呼ばれたのに対して付けられた色名です。
- 使用する色材
- アカネ/ログウッド
薄色
うすいろ
いささかに 思ひて来しを多古の浦に 咲ける藤見て 一夜経ぬべし
万葉集
【説明】
平安時代、紫が高貴な色であるため色の代表として扱われていたことによります。『延喜式』縫殿寮にはその染色法が書かれており、綾一疋を紫草五斤で染めるとあり、これは深紫を染める紫根の量の六分の一にすぎません。ちなみに、薄色は紫の色みが淡いので、禁色とはされませんでした。
- 使用する色材
- エンジュ
蒸栗色
むしくりいろ
虫の音も ほのかになりぬ 花すすき 穂にいずる宿の 秋の夕暮れ
金槐和歌集 源実朝
蒸栗色(むしくりいろ)とは、蒸した栗の皮を向いた実のような、緑みがかった淡い黄色のことです。栗の実に由来する色といえば赤茶色の『栗色』や『栗皮色 くりかわいろ』を想像しがちですが、蒸栗色は炊きあがった栗ごはんの間から顔を出す美味しそうな栗の実の色です。
- 使用する色材
- マリーゴールド
黄色
きいろ
金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして 銀杏散るなり岡の夕日に
与謝野晶子
- 使用する色材
- エンジュ
黄檗色
きはだいろ
この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば
藤原道長
古くから染料として知られたほか、健胃剤や傷薬などの漢方薬としても用いられました。また黄蘗で染めた紙を黄蘗紙とよび、経文や公文書用にも多く使われ現在も保存されています。ただし、布に単独で染められることは珍しく、緑系や赤系の染物の下染めにされることが多かったようです。
- 使用する色材
- エンジュ/ログウッド
金糸雀色
かなりあいろ
千鳥なく柚の湊をとひこかし唐土船のよるのねざめに
藤原定家(続古今和歌集)
『金糸雀色』の色名ができたのは明治以降。
- 使用する色材
- エンジュ/ログウッド
柳緑
りゅうりょく
新緑眩しい皐月晴れ、茶摘みの季節。
柳緑花紅
11世紀の中国の詩人・蘇軾
- 使用する色材
- ログウッド
浅縹色
あさはなだいろ
夏の宵、川床にて暑さをしのぐ様。
正倉院の「縹地大唐花紋錦(はなだじおおからはなもんにしき)」。
琵琶を入れる袋の残片で、淡い藍色をベースに10 色もの藍を配色です。
藍染めによる青色が位色(位に応じて定められた服の色)の中で、天皇の官位12 階6 色のうち第2位とされ、上層貴族階級の人々は藍染めの絹の衣類を着ていたそうです。
- 使用する色材
- ログウッド
藍色
あいいろ
いかにしていかに知らまし偽りを空にただすの神なかりせば
清少納言
- 使用する色材
- アカネ/ログウッド/マリーゴールド
利久鼠
りきゅうねず
鼠色が流行した江戸時代に登場した色名で、くすんだイメージがあり、緑みがかっているのが特徴。
- 使用する色材
- ログウッド/マリーゴールド
墨色
すみいろ
墨色は古来から僧侶の常服の色や凶事を表す色でしたが、近代に入ると装飾として普及していきました。
- 使用する色材
- アカネ/ログウッド
長春色
ちょうしゅんいろ
長春とは本来は常春の意味ですが、古く中国から渡来した「長春花」からきており、この薔薇の花が色名の由来です。
- 使用する色材
- アカネ/マリーゴールド
金茶
きんちゃ
和服、和装小物、ふろしき、作務衣などに用いられるほか、洋服にも合う色で、明治30〜40年代にかけて礼状の帯揚げなどの色として流行しました。
- 使用する色材
- アカネ/マリーゴールド
海老茶
えびちゃ
"えびいろ"とは、もとはエビカズラに由来するワインレッドの様な色。
- 使用する色材
- エンジュ/ログウッド
青柳鼠
あおやぎねず
緑みの鼠色に用いられます。江戸時代に流行しました。
- 使用する色材
- コチニール
藤鼠
ふじねずみ
江戸中期より婦人の和服の地色として好まれ、明治・大正にかけてたびたび流行しました。
- 使用する色材
- ログウッド
銀色
ぎんいろ
『万葉集』でも奥山億良が「銀も金も玉も何せむに勝れる宝子に及かめやも」と詠んでいます。
- 使用する色材
- コチニール
桜色
さくらいろ
初出は『古今和歌集』の「桜色に衣は深く染めて着む。花の散りなむ後の形見に」です。
- 使用する色材
- アカネ/マリーゴールド
向日葵色
ひまわりいろ
金襴はもともと中国・宗代に紋織りされた織金という唐織物の一種で、平安時代中期には日宋貿易などで都の京都まで船載されました。
- 使用する色材
- エンジュ
花葉色
はなばいろ
おおよそ山吹色と載っています。
- 使用する色材
- エンジュ/ログウッド
白緑
びゃくりょく
"白"は淡いの意味。奈良時代には仏像や仏画の彩色に重用されました。
- 使用する色材
- ログウッド
紅碧
べにみどり
「紅碧。俗にべにかけそらいろといふ」とあるように「紅掛空色」とも呼ばれました。
- 使用する色材
- アカネ/ログウッド
灰桜
はいざくら
灰桜とは、やや灰色がかった明るい桜色のことです。